漁業経営の持続性確保を目指した教育・研究活動

 漁業経営の持続性確保にむけた研究活動を、ゼミ生らとともに行っています。


離島地域の水産物流通の改善

 鹿児島県には数多くの離島があり、それらの地域では水産業が主力産業となっています。周辺海域は水産資源に恵まれる一方で、流通条件に大きな不利を抱えています。十島村と鹿児島市を結ぶフェリーは週2便です。鮮度を保ったまま生鮮出荷するには限界があります。2012年より十島村中之島では、民間企業の協力を得ながら冷凍出荷の取り組みを開始しました。2015年度より、民間業者や漁業者の協力を得ながら調査を実施しました。その結果、冷凍出荷によって中之島の漁業経営は大きく変化したことが明らかになりました。



複合養殖による経営安定化

 鹿児島県東町はブリ養殖の一大産地です。数多くの生産者がブリ養殖に力を注ぐ一方で、単一魚種のみの養殖は様々な経営リスクにさらされます。近年では、リスク分散などを目的にサバ、メバル、カワハギなどを組み合わせる経営体が複数みられるようになりました。これらの市場はぶりに比べたら小さなものですが、細やかに市場対応することによってリスク分散と利益確保が目指されています。




ブランド化による高付加価値化

 島嶼地域においても、販売価格改善を目的にしたブランド化の取り組みがあちこちで行われています。しかし、その取り組みが価格にまで反映できた「成功例」はほとんど存在しません。果たしてブランド化の取り組みのkeyは何なのでしょうか。ブランド化の取り組みにより価格上昇がみられる「かぼすブリ」(大分県)の事例を生産段階・販売段階の両面から分析しました。

 



資本誘致による地域・漁協振興

 養殖資本を誘致し、地域経済や漁協経営の改善を目指す取り組みが各地でみられます。果たして資本誘致は漁村地域に何をもたらすのでしょうか。

 マグロ養殖資本が立地する複数の離島において調査を実施しました。その結果、資本の誘致は経済的効果を発揮する一方で、課題も少なくないことが明らかになってきました。 



締めの工夫による単価改善

 限られた漁獲物から最大限の利益を得るkeyのひとつは、出荷単価をいかに向上させるかにあります。こちらの経営体では、漁獲物の一部を脱血&神経締めする取り組みを行っています。その結果、処理を施した魚と未処理の魚では明確な単価差がみられるようになりました。ただし、処理にはかなりの手間がかかるため、漁獲物全てに処理を施すわけにはいきません。単価差が出そうな魚種・魚体を経験に基づいて選定することが大切になります。



遊漁船の安全確保にむけた実態分析

 船釣りは海洋レジャーを代表するもののひとつです。たくさんの人々が釣りを楽しんでいる一方で、毎年のように痛ましい海難事故が発生しています。遊漁船が絡む海難事故は何故発生するのでしょうか。海難事故が多い地域、そうではない地域などを対象に、遊漁船業者による安全確保の取り組みについて調査を行っています。

 その結果、事故を誘発する原因のいくつかが分かってきました。また、近年で事故発生時の海難救助を支援する新しいシステムも導入されつつあることも明らかになりました。

 



漁業者による資源管理の効果分析

 日本では古くから漁業による自主的な資源管理の取り組みが行われています。漁業者が長年培った経験や勘が頼りでした。しかし近年は、水産試験場からの科学的知見をふんだんに取り入れた自主的管理が全国各地で展開しています。

 北は北海道、南は鹿児島、漁業者と試験研究機関が一体となった取り組みの分析をすすめています。